三国酔(粋)人経綸問答


 



(「ののちゃん」風偽善口調で)

父:与野党相乗りの「少子化対策基本法案」が今(1999年)通常国会にかけられるようだ。
(注 2001年に廃案となったが、2003年通常国会にて成立)

子:どんな内容なの。

父:労働時間の短縮や育児休業制度の充実、保育サービスの充実、子育てへの経済的支援などが眼目だそうだ。98年の合計特殊出生率は1.38人と最低を記録し、労働力人口が2005年には減少に転じるばかりか、このままだと百年後の日本の人口が半分になってしまうことに対する危機感のあらわれだね。

子:そんな手ぬるい政策じゃ出生率の低下は止められないよ。必要なのは、「父性と母性の復権」によって、家庭の役割を見直し、子育てを「国民の責務」にすることだよ。

父:「産みたくない」人はどうするの。

子:その「自分だけよければいい」主義が左翼を勢いづけて、日本を亡ぼすんだ。男女の賃金格差や女性の昇進を阻む今の企業風土を強化して、男を仕事に、女を家事に追い込んで、子供をたくさん作らない無責任な非国民を差別する雰囲気を社会につくればいいんだ。「子供が親の介護をする日本の美風」も守れて一石二鳥だよ。

父:いや、それができたのは「春闘」が機能していた時代の大企業だけさ。70年代からこのかた、可処分所得や実質賃金の伸びが停滞しているのに、世帯当たりの働き手が増えているのは、ダンナの賃金だけじゃ暮らしていけない時代に、どんどんなっていっている証拠だよ。「グローバル経済という黒船」に対抗するには、根本的な発想の転換が必要だ。

子:どんなことなの。

父:「勝ち組」に乗るアッパーミドル層を、どんどん増やすことだな。現在の公教育のあり方を改めて、徹底した「日の丸・君が代」教育を施すと共に、「パソコンを必修」にして、英語を教育言語にする。海外の大学にどんどん留学させて、情報通信産業を基盤にした立国で生き残りを図るんだ。経済成長の核となる産業がある限り、その恩恵にあずかって国外移転のきかない建設・サービス業が生き残ることができるから、「国家百年の計」は大丈夫さ。

子:家庭の問題はどうするの。

父:両親が共働きでも、どちらかの祖父母が同居して、子育てを引き受ければいいんだ。「新たな大家族制」の推進だ。政府はそういう大家族を物心両面で支援する。もしどうしても労働人口が不足すれば、「外国人労働者」を入れればいい。「フィリピン人のメイド」や「イラン人の建設労働者」とかだ。勘違いしちゃだめだよ、「一時的な労働力」であって、移民じゃない。

子:でも、僕は外人が日本に住むのは反対だな。どうせやつらは、日本人と同じ権利を要求するようになるに決まってるんだ。

父:だから、3年とかの短期滞在しか認めなければいいんだ。例えば今、日系ブラジル人が出稼ぎに来てるだろう。実は彼らは、3〜5年くらいのサイクルで帰国しているんだよ。全体数が変わらないから定住しているように見えるけど、中身はそうでない。外国人が日本の独特の社会になじむのは難しいのさ。彼らはカネだけが目当てなんだから、カネだけきちんと払ってやるように保障すればいいんだ。だから、コントロールできる範囲で、農業とか介護補助とか、特定の職種カテゴリーのみに外国人労働者を認可する。その代わり、不法滞在は厳しく取り締まるべきだよ。あれは犯罪の温床だ。まして外国人参政権なんて、とんでもない。あれは「国籍とか国家の重要性」を認識していない議論だ。

祖父:さっきから聞いていれば、二人とも手前勝手なことばかり言っているな。息子は「欧米流の拝金主義」に毒されて、孫は「鎖国的事大主義」に逆戻りというわけか。世代が下るに従って、視野狭窄が進むのはどういうわけだ。これでは、大東亜新秩序の理想に殉じていった同胞が浮かばれん。アメリカとEUに対抗するには、日本はアジアと手を結ぶ必要がある。

父・子:あれ、いつからそこに...

祖父:いいから黙って聞け。グローバリズムの名の下の白人支配に対抗するには、日本を中心とした東アジアの「文明」圏が繁栄していくしかない。そのためには、アジアからの留学生や企業家をもっと日本に受け入れて、「日本文化と日本社会のすばらしさ」を、近隣諸国から、普遍的に広めていく必要がある。

子:でもそういう行き方は、昔の植民地主義と同じだと思われて、「反日に凝り固まってるアジア」には理解されないんじゃ...?

祖父:大東亜戦争の間違いは、植民地の人々に天皇制を押しつけることによって、彼らを二級市民の扱いにしたことだ。民主主義の現代では、それはいかん。だから、日本に入ってくる人々を、「学歴や専門技術の有無」と「日本語能力」で選別すればよい。「不良外国人」さえ入れなければいいんだ。定住権を与える前に、5年程度の予備期間を設け、犯罪を犯すような輩は即刻追放する。「言語は文化の基本」であるから、言語的同化が受け入れの大前提だ。日本語をアジアの国際共通語にするくらいの意気込みが、政府には必要だ。アジアの高学歴で専門知識を身につけた人々にもチャンスを与えれば、必ず国内市場の拡大、ひいては日本社会の発展に貢献してくれる。民族の違いなど、欧米資本の経済支配に対抗するには小さな差異でしかない。

父:そうは言っても、外国人の定住を認めるのは、今の日本では抵抗が大きいと思うけど...

祖父:何を言う。そのくらいの英断をしなければ、少子化と経済侵略のダブルパンチという、この国難には対処できんぞ。

子:ボクは日本がこのまま沈没することになっても、外国人が入らないほうがいいや。


1999.1記


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